2019/6/6から6/13までの8日間、AAMI2019 Exchange(Association for the Advancement of Medical Instrumentation ,AAMI)の学会参加と海外施設見学のツアーに参加したので報告する。
今回の開催地、アメリカオハイオ州クリーブランドへは成田から飛行機で約12時間のフライト後、ワシントンDCで乗り継ぎ2時間のフライトで到着した。
到着した6月6日はクリーブランドクリニックの病院見学をさせて頂いた。(とにかく規模が大きく、その規模の大きさに驚かされた)。建物数56棟、ホテル3棟、従業員数は6万6千人であり、日本では考えられない規模であった。1440床で従業員がこの人数なのは仕事が細分化されているためだと考える。日本の臨床工学技士の分野だけでも機器管理、人工呼吸器、血液浄化、心カテ、人工心肺等、業務が分かれており、分野毎にスペシャリストがいた。日本では逆にそれらの業務が1つの資格で行えるのでやりがいは大いにある仕事だと再認識する反面、ジェネラリストへの道のりの遠さを感じ、身の引き締まる思いがした。病院内は広々としており、廊下も5mくらいあったと思う。また院内を走る、ゴルフ場にあるカートのようなタクシーがあったり、それを呼ぶ受話器があったり、物を運んでくれるロボットが動いていたり、目新しいものばかりであった。また長い廊下には一定間隔ごとに大きなモニターがつけられており病院の宣伝が常に流れていた。アメリカでの医療はビジネスの一つと捉えられておりその考え方も新鮮だった。
病院の中にはものづくりのための設備があり、アイディアの素材を作る部屋、形にする部屋、実際に試す部屋があり、日本でいう医工連携が病院の中だけで完結されていた。また完成した商品によって起業した会社が壁一面に張り出されており、そのようなビジネスに大変驚いた。
病院見学の後、AAMIのレセプションに参加した。外国人に囲まれての食事という初めての体験で緊張しながら食事していたが日本人から話しかけられ、少しリラックスできた。その方は製薬会社に勤めており、自社の薬品を世界で展開するためにアメリカを拠点に営業をしていた。自分の知らないところで多くの日本人が世界で働いているのだと実感した。
レセプション後に行われた調印式では、日本とアメリカの相互協力を約束した歴史的な瞬間を目撃することができた。夜にはメジャーリーグ観戦を人生で初めてすることができて、興奮した。地元の人々の熱気を肌で感じ、一緒に勝利の喜びを味わえたことは最高の思い出になった。ホテルに戻ってからは次の日発表の井桁さんと青木さんの予演会が行われた。
6月8日には初めてアメリカ人のプレゼンを見ることができた。その発表者この分野では自分が一番だという自信に満ち溢れており、読み原稿無しでオーディエンスの目を見ながら身振り手振りで伝える姿は印象に残った。内容はあまり分からなかったが、インシデントやアクシデントが起こる原因に対して、開発したセンサーが有用だったというプレゼンだったように思う。質疑応答としてはそのセンサーでどれくらい利益があるか、それがどのように価値のあるものかなど、コスト意識の高い質問で、少し目線が違うと感じた。また自分の聞きたいことが聞けていなければ、他の人が手を挙げていてもお構いなしでマイクを離さないという光景は、しっかりと自分の意見を主張するアメリカらしいと感じた。
その後の井桁さんのプレゼンは海外で初めて見た日本人のプレゼンだった。井桁さんの流暢な英語や質疑応答の返答する姿はとても格好良く感じた。内容は日本の臨床工学技士は国家資格を有すること、会員は3万人おり毎年大規模の学会も開催しているという日本の現状報告であった。アメリカではCEが900人程度で、主な仕事が機器購入時の機器選定や、機械の故障の分析等であり臨床業務は介入していなかった。現場の機器トラブルなどの対応とはバイオメディカルエンジニアという方が主に行っており、CEはその方々に指示を出す形であった。またCE専門の養成学校はないそうで専門卒がバイオメディカルエンジニア、大卒がCEになることが多いと聞いている。中にはバイオメディカルエンジニアからCEになる人もおり様々であった。当たり前に思っていた日本の国家資格の取得制度は外国と比べるとしっかりしているのではないかと感じた。。機器展示場は今まで見た中で最も大きい規模の場所に驚いた。またメーカーのブースに置いているものなどがTシャツやキャップ、水筒や剣のおもちゃなどユニークなものが多く楽しめた。会場を見て回った後、近くに「Cleveland」の文字のモニュメントで写真を撮れたことは旅の記念になった。晩に食べたステーキは絶品であった。その後の予演会では亀田総合病院の森さん、二プロの近藤さんが最終調整を行われた。
6/10の森さんの発表では自施設においてICUの患者が退床した後、チェックしたデータをモニターへ飛ばすシステムを開発したという報告であった。近藤さんの発表はニプロハートシステムという遠隔モニタリングのデバイス紹介であった。二人の発表を聞いた後、クリーブランドクリニックの臨床の見学をさせて頂いた。心カテ室、オペ室、ICU、CE室等を見学することができた。まず心カテ室は8部屋あり1日の心カテ件数は45件と多かった。また緊急カテ対応時の人数も定例時と同じ人数で対応していて、再灌流時間は45分程度あった。次のオペ室へは専用のガウンを着て入った。廊下には機械がマーカーに沿って並べられており、人工心肺装置はプライミングされてカバーがかけられていた。おそらく心外オペ前にプライミングされた人工心肺装置をオペ室へ運び入れることで効率的な運用を行っているのだと思った。オペ中の人工心肺業務は一人で行われていた。循環器病棟は400 床あったが、そのうちの3分の1がICUであった。ICUには透視のある部屋が1部屋あり、緊急時のPCPS等のカニュレーションなどが安全に行えると感じた。また冠動脈由来であったり、心不全由来であったり、疾患ごとに入床場所が決まっていて循環器疾患の中でも細分化されていた。CE室は輸液ポンプやフットポンプ、吸引機などが機器管理ソフトとともに置かれていて整頓されて並べられていた。また1患者1使用となるように貸し出し機器にはテープが巻かれていた。CE室近辺の廊下には荷物等の運搬ロボットが稼働していた。人が近くにいる時や、ロボット同士がすれ違う時には止まったり減速したりして驚いた。最終日にはクリーブランドから車で4時間のところにあるナイアガラの滝を見ることができ、その雄大さに感動した。船に乗って滝を下から見た時は本当に大きく、水しぶきの迫力を間近に感じることができた。
今回クリーブランドクリニックの見学と、AAMI Exchange 2019へ参加させて頂いたことで、本当に多くのことを学べることができ、日本各地から集まった臨床工学技士の方々と交流し、大変有意義であった。長澤さんをはじめこのようなツアーを企画してくださった方々とご一緒に旅して頂いた方々に感謝の意を表します。