アメリカ コロラド州デンバーでの病院見学及び学会参加

名古屋ハートセンター臨床工学部 西尾 皓人

 Cardio Vasculer Innovation 2019(以下 CVI)への参加と左心耳閉鎖術の見学を兼ねまして、アメリカコロラド州デンバーへの出張という貴重な体験をさせていただきましたので報告させていただきます。Dr3名、コメディカル2名(臨床工学技士1名、放射線技師兼臨床工学技士1名)での出張です。この度見学させていただいたのは、アメリカでTechnologist(日本で言う臨床工学技士)として活躍されており、国際交流委員会支援部会米国駐在員でおられる長澤智一さんが勤務されておりますuchealthです。今回、全日程を通して長澤さんのお世話になりました。長澤さんは名古屋ハートセンター兼岐阜ハートセンター臨床工学部 奥田泰三 技士長の同級生でおられ、昨年当院へお越しいただきアメリカで働く臨床工学技士として講演会をして頂いた経緯がありました。デンバー国際空港に到着すると迎えに来ていただいた長澤さんとすぐに会うことができました。長澤さんの運転するレンタカーでコロラドスプリングスまで移動し、この日はuchealthのスタッフの方々で食事をされているとのことで、そこに合流させていただくこととなりました。スタッフの皆さんはとても気さくで仲が好さそうでした。

その後はそのまま長澤さんにuchealthの近くのモーテルに送っていただき、翌日にまた迎えに来ていただくこととなりました。uchealthの稼働は早く、朝7時迄に病院へと到着。日本の病院よりも大規模な佇まいに圧倒されます。

ご厚意でDr専用ラウンジで朝食を頂いた後、カテーテル室に案内していただきました。この日、左心耳閉鎖術は当初5件の予定でしたが、1件中止となり4件で午前中に実施予定。左心耳閉鎖術を施行するカテーテル室は普段EPでも使用されているそうでそちらのシステムも気になってしまうのは臨床工学技士の性でしょうか・・・

カテーテル室にはDrは麻酔医1名、施行医1名のみでその他は全てPara Medicalでした。患者様入室後、長澤さんを中心に準備を整え、麻酔導入。食道エコーとAngioを元に手技を進め、左心耳に無事留置完了。手技が終わるとDrはすぐに手を下して長澤さんのようなPara Medicalスタッフが止血をしていました。また、各々役割がはっきりと別れており、キビキビと動いてましたが、皆フランクで楽しそうに仕事をしていたのが大変印象的でした。左心耳閉鎖術は非常にスムーズで、1症例辺り1時間程度で終了していました。途中で必要物品や準備の方法、システム、手技のポイント等を丁寧に教えていただきました。手技をスムーズに進めるためにマニュアルがしっかりと作られており、長澤さんが作成されているそうで、それらの手技のマニュアル、左心耳閉鎖デバイスのサイズ選択表をいただくことができました。当院でもこの10月から左心耳閉鎖術の施行が可能となる予定ですので、これを元に当院のマニュアル及びデータベースを作成したいと思います。

 左心耳閉鎖術の症例間でAMIの救急搬送がありましたので緊急カテーテルの様子も見学させていただくことができました。緊急カテーテルでも部屋にいるDrは一人でPara Medicalがほとんどをサポートしている様子が見て取れました。緊急カテーテルは右冠動脈の閉塞ですぐにWireを通し, DirectにSTENTを留置して終了していました。日本では徐々に使用頻度が増えいているイメージングデバイスもほとんど使用することはないそうです。症例見学で日本との違いを感じたのはやはり患者様の体格です。日本人よりも体格が大きく、穿刺も大変そうな印象でした。日本よりもPara Medicalが担う業務が多くDrは治療に集中できるように各スタッフがしっかりとサポートしていると感じました。また、スタッフ一人ひとりの放射線防護に関する意識が強く、鉛入りの帽子をしっかりと被っている方が多かったです。見学終了後、スタッフの皆さんと記念撮影。快く見学を受け入れていただきましてありがとうございました。

翌日からCVI2019参加となりました。CVIは冠動脈疾患、末梢血管疾患、ストラクチャーを中心とし、心臓外科、循環器内科、研修医、看護師、TechnologisitなどのPara Medicalが幅広く参加する日本からもDrの参加が増えつつある学会です。

日本よりもチャレンジングな症例も多く、さまざまな合併症症例の報告を見ることができました。また、SHD部門ではTRに対するClipやTriCinch、TMVRといった日本ではまだ未認可のデバイスも多く発表されており、デバイスにおいて日本がまだまだ遅れているということを実感しました。この日、長澤さんも口述発表があるとのことで、聴講させていただきました。

拡大したSVC Bypassに対し、Amplatzerを留置するという大変興味深い症例でいくつか質問があったなかで流暢に英語で話されている姿に「流石」の一言でした。今回、放射線技師長兼臨床工学技士の小林技師長は口述での発表でした。小林技師長は海外での口述発表は初めてということで大変なチャレンジで、毎晩長澤さんと息子さんに英語の表現と発音の指導をして頂いていました。小林技師長の発表は最終日ということで最後まで緊張していなければならないのでとても大変そうでした。一方、私とDrはポスター発表で所定の時間にポスターを張り、質問があったら答えるという形でした。私は日本から留学されているDrからの質問に日本語で答えただけでしたが無事終了。

学会参加最終日はついに小林技師長の発表です。ひとつ前の発表の方が会場に不在であったため、予定よりも早い登壇となりましたが、毎日の練習の成果が実を結びすらすらと発表できており、座長やコメンテーター、会場の人々にもきちんと通じてました。座長からの質問にも必死で答えようとしている姿に大変感銘を受けました。もし次回チャンスがあれば小林技師長のように口述発表にもチャレンジしたいと思いました。発表終了後に安堵の様子の小林技師長の記念撮影をしました。

学会後、日本から留学されている先生方との交流を兼ねて食事会に参加させていただきました。留学されている先生方はさすがモチベーションが高く、大変良い刺激となりました。

翌日、長澤さんにデンバー国際空港まで送っていただき、無事帰国となりました

今回の病院見学、学会参加を通して、今後の日本での治療の進歩を期待するとともに、医療現場での臨床工学技士の在り方について考える機会となりました。長澤さんがアメリカで活躍される姿を見て、日本での未来の臨床工学技士の姿がそこにあるのでは、と感じました。日本国内だけでは感じることのできない雰囲気を味わうことができたこと、海外の医療職の方々と交流できたことは大変有意義でした。今後の業務のモチベーションにつなげていきたいと強く感じることができました。

最後に、この度このような海外での病院見学・学会発表という貴重な機会をくださった長澤さん、山本先生、先生方、病院関係者の皆様に深く感謝致します。