公益社団法人 日本臨床工学技士会 国際交流委員会

福田恵子, 井福武志, 長澤智一

 

2019年10月20日はグローバルサミット、21日から22日の2日間は、ICEHTMC2019(International Clinical Engineering and Health Technology Management Congress 2019 )がイタリアのローマで開催され、参加の機会を得ましたのでご報告いたします。

注)アメリカを中心としたClinical Engineer と日本のクリニカルエンジニアには、職域に大きな差があり、日本のクリニカルエンジニアの機器管理部門を指して、Clinical Engineerと言い換えることができます。

IFMBE CED 運営理事会、ICBミーティング、グローバルサミット

ICEHTMC とは、IFMBE (International Federation of Medical and Biological Engineering) の下部 CED (Clinical Engineering Division) が2年に一度、開催・運営している学会です。

なおIFMBE CEDは、WHOと協力関係にあり、WHO職員でSenior Adviser for Medical Devices Innovation Access and Use Essential Medicines and Health Products 部の責任者Adriana アドレアーナ氏が密に関係しています。

ICBミーティング

ICB (International Credentialing Board) とは、CED 理事会がClinical Engineer のために設立させた国際資格認定理事会です。理事会は8名で構成されており、日本も理事に選ばれました。そしてICEHTMC開催前にICBミーティングが行われることとなり長澤が急遽出席することになりました。ミーティングには、福田、井福、長澤の3名が出席し、「認定試験をどの様に実施するのか、実技試験も含めるか」等話し合われましたが、基本的には「Clinical Engineerとして働いているが資格を持っていない人(開発途上国等で働く人々)にどの様に資格を与え、Clinical Engineerを広く一般に認知させるのか」、そして「Clinical Engineerとしての水準をどのレベルするのか」が協議されました。その中で、日本では臨床工学技士が国家資格として誕生してから32年、45,000人以上の有資格者が居るので、日本の背景や現状など非常に興味を示され、多くの意見が求められ日本の役割の大きさを実感させられました。

次に、各国の現状と問題点の洗い出し、地域別に更にブラッシュアップさせる為に下記のグローバルサミットへと進みました。

グローバルサミット

過去最高の70カ国、約100人の各国の代表が集まり、情報共有や今後の課題について話し合いが行われました。今回は、初の試みとしてWHOが定める地域ごとに集まり(AFRO,AMR,EMRO,SEARO,WPRO)、その中で自国の病院の状況やClinical Engineerの立ち位置や関連学会の状況などを共有すると共に、地域における課題などを話し合いました。日本の参加地域は、WPRO(西太平洋地域事務局)管轄で、その参加国は、日本、中国、フィリピンとオーストラリアで、近隣諸国の方と直接話をすることが出来き、顔の見えるよい関係を築く事ができました。その司会を福田が任されましたが、WPRO各国の現状に大きな開きがあり、まとめるのに苦労しました。

 

更に、会議会場からバスでローマの中心部に移動し、各地域で話し合ったものを持ち寄り、全世界共通の解決すべき重要課題を絞り込み、下記3点が計上されました。

  1. 教育と指導プログラムの不足、
  2. 意思決定においてのClinical Engineeringの役割の向上、
  3. 医療機器安全使用関連の法律の不足

 

また、事前に各国の情報の提出依頼があり、63カ国の情報がHPにて共有されていますのでご覧下さい。(https://ced.ifmbe.org/blog/ifmbe-ced-cestatus-cesummit2019.html

ICEHTMC2019について

ICEHTMCは、Clinical Engineer主催のClinical Engineerのための国際学会であり、第1回目が4年前の2015年に中国の杭州で開催され、第2回目が2年前の2017年にブラジルのサンパウロで開催されました。2年ごとに開催されるため今回が第3回目であり、学会長はMr. Stefano Bergamascoで、イタリアClinical Engineering学会の主催で開催されました。過去最高の約70カ国から約1,000人が参加し、以下の項目で口頭発表やポスターセッションが行われました。また、協賛企業は約40社ありました。

 

  • Health Technology Assessment
  • Medical equipment management in hospitals
  • ICT and medical informatics
  • Health Operations/Project Management
  • Clinical risk management, safety, emergency preparedness
  • Development of innovative devices
  • Design of health facilities
  • Technologies for home care
  • International standards and regulations
  • Education, certification, training
  • Artificial Intelligence, Big Data
  • Global challenges, sustainable development

 

抄録に関しては、500以上の登録があり、福田もサイエンスコミッティーとして、事前に20の抄録を読み項目ごとにポイントをつけ、上位の方が口頭発表となりました。今回初めてサイエンスコミッティーとして依頼を受けましたが、世界のClinical Engineerの質や人数などが以前に比べて確実に向上していることに驚いたとともに刺激を受けました。

さらに、今回は全登録の中でインターネットによる一般の部での最優秀賞の投票や、学生部門で最優秀賞の授与式がありました。また、レジストレーション費や宿泊費に関しても、学生、開発途上国に優しい配慮がなされた学会でした。

次回の第4回目を日本での開催を強く要請され、理事会でも熟考しましたが予算面等も踏まえ、今後前向きに検討することで辞退しました。結果として、次回開催はAAMI (Association for the Advancement of Medical Instrumentation)が後援となり、アメリカのワシントンDCでの開催が決定し広報されました。

発表について

約80~100の口頭発表と約240のポスターセッションがあり、福田の発表は、日本でも加速している革新的なデバイス開発(Development of innovative devices)について、日本で開発するにあたり必要なfactorについてなど、前職の経験を活かしてポスターセッションを行いました。スウェーデンの方からは日本の薬事について質問され、ブラジルの方の発表は福田とほぼ同じ視点であり、ケニアの女性は自然な形の分娩装置について開発事例について、さらにインドの方はCT装置の解析装置についての開発など、幅が広く興味深い発表が多く、他のポスタースピーカーへの質問もしてきました。

また今回、国際交流支援部会の田原氏もポスターセッションに参加されており、初めての国際学会での発表でありましたが堂々として良い経験をされておられました。この学会は比較的審査が通りやすく発表の機会を得やすいため、是非、日本からもっと多くの方に参加していただき発表して欲しいと願います。さらに、「革新的なデバイス開発」の口頭発表では、エクアドルの教授とともに座長を努めさせていただき良い経験ができました。

(福田座長風景)          (ポスターセッションの田原氏と福田)

Dinner Party

ICEHTMC主催で行われた夕食会は、景観の良い丘の上のレストランで行われました。まず、オープンテラスにて立席のカクテルパーティーがあり、様々な国の方とフランクに話ができました。Clinical Engineerだけではなく、企業の方も含め多種多様な方との医療情報共有ができ有意義な時間となりました。その後、室内に移りメインコースをいただきながら、国内外にて功績のあるClinical Engineerやチームに対しアワード授与式がありました。日本人はこの様な場で控えめであるが、国際的に活躍、貢献及びリーダーシップを発揮するためには1歩前に出て意見を延べ、さらに1歩前でリーダーシップを取る事が、今後の日本のCEに必要なものと感じました。

(ディナーパーティー)

 

謝辞

最後に、公社)日本臨床工学技士会 国際交流委員会が世界のCEと交流できる場への参入を促していただいたIFMBE設立当初からの加盟団体である(公社)日本生体医工学学会に感謝申し上げます。