「かなちゃんパパの近況報告
~コーチング研修インストラクター取得までの道のり~」
第4回
コーチングへの第1歩
さて、私がコーチングのセミナーに参加するに至った経緯をお話ししましょう。
私は今年の3月まで4名の部下を持つ臨床工学部の責任者でした。
27年前に今の職場に入った時は、上司が1名いる部門で、人工心肺と機器管理が主な業務でありました。
経験を積むと共に、呼吸療法、新生児医療、在宅医療、教育活動、透析療法など多くの業務拡大をしていきました。
患者さんが必要とする仕事であれば積極的に業務を拡大する、365日24時間、自分を必要としてくれる仕事の依頼があれば駆けつけると言う気持ちでした。
上司の定年と共に3人体制の責任者になり、人員要求を行い5名体制まで増員しました。若い部下の育成を先決に業務拡大は図らずに体制を整えることに専念しました。
しかし、業務拡大と共に身に付けた私の知識は、部下にとっては脅威だったのかも知れません。夜間休日を問わずに患者さんに密接した医療を行う私の行為はプレッシャーであったのかも知れません。
休日も時間さえあれば学会やセミナーに参加し自己研鑽する、講演で全国を駆け回る。依頼原稿も年間10本程度をそつなくこなすパワフルなことも異常な人間と思われていたかも知れません。患者さんやご家族からは感謝され信頼される人間関係作りの手法は、部下には真似できないと思われたかもしれません。部下にとっては、良い言い方をすれば雲の上の存在であったと思います。
私の信念は、「患者さんに失礼のない医療を提供すること」ですから、部下の指導は患者さん中心の考え方で非常に厳しいものでした。業務の確認も細かく、誤魔化しのきかない窮屈な組織だったと思います。
できる上司(自分ではまだまだ未熟者と思っていました)ではあるが、うっとうしい上司であったと思います。その上、多くの医師や看護師にすごく頼りにされていた反面、指摘が厳しく正論過ぎることでプライドを傷付けられたと感じ、業務のテリトリーを犯すと言う行為に毛嫌いする医師や看護師もいたのだと思います。
業務は、5名で4名分の仕事量と言うのが私の考え方でしたが、自分では3.5名分の仕事量だと思っていました。部下の休暇は十分に取れるようにしていましたし、部下のフォローも常にしていました。的確な指示もしていたので、大きなトラブルが起こることもありませんでした。
患者さんから頂ける経験は一番の教育であると言う考えから、ベッドサイドに行って診ることを勧め、自らが率先して早朝から夜間までベッドサイドで患者さんを診ていました。
患者さんへの安心で安全で適正な医療の提供と言う考えを軸としていた中で、教育活動などを推進する業務拡大で、部下を自然に圧迫して行ったのでしょう。3.5人分の仕事量と思っていたのが、部下にとっては6人分ぐらいの業務に感じていたのかも知れません。部下にとっては、仕事ができる上司ではあるものの、目指したい臨床工学技士では無く、一緒には働きにくい上司であったと思われます。
部下の成長は容易には進まず、計画的に業務拡大は進みませんでした。教えることは大好きなので指導・育成にはかなりのエネルギーを注ぎましたが、なかなか思うような成長は見られず、焦りを感じ、更なる厳しい指導になって行ったのだと思います。
自分だけが情熱と熱意をもって指導にあたっても、指導を受ける側にその意思・興味・前向きさ・目標がなければ、時間が取られるばかりで前に進まないのです。戸塚ヨットスクール張りのスパルタ、根性論では理にかなった指導・育成ができないことを後で気づくことになるのです。
こんな積み重ねの中で、今年の3月に病院長に呼び出され、4月からは臨床を離れて、部下を持たない院内専属の教育担当になるようにと命令がありました。こんな屈辱的な人事には納得できませんでした。退職も考えました。
しかし、27年間働いたこの病院に対する思いと、「患者さんに失礼のない医療を提供すること」と言う思いを心底に持つことで、どうにか4月を迎えました。
何か見えてくるだろうと耐え忍ぶ日々の中で、病院長から「コーチングを勉強してみないか。必ず君のためになるはずだ。」と言う言葉から、全く「コーチング」に無知であった私が、コーチングのセミナーについて調べ始めたと言うのが「コーチング」への第1歩になりました。
自分は、働き者で、頑張り屋で、自分にしか無い知識と技術があり、自分がいなければ助けられなかった患者さんがいる。他職種からも信頼され、患者さんやご家族にも信頼されている。教育活動や医療安全活動にも積極的であり、病院には絶対に欠かせない人間であると言う自負を持っていた心を覆されたのである。
ここで書いた5年間の部下や他職種との関係や、部下の私に対する気持ちなどは全て私の推論でしかありません。部を離れることで見えてくること、無になって考えること、振り返ることで分かったこと、コーチングのセミナーを受けて受容できるようになった今、敢えてこの様な文章が書けるようになったことは、自らが少しの成長できたのかなと思うのである。
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