
https://24x7mag.com/inside-htm/people-to-watch/from-one-person-operation-2026-bmet-year/
ボードディナーでの約束が果たされました。
上記URL,AAMIの「2026 BMET of the Year」を受賞された吉岡淳氏のインタビュー記事の翻訳です。
1人だけの体制から、2026年「BMET of the Year」への軌跡
**(2026年6月10日 / People to Watch / アリックス・アーネット著)**
### 吉岡淳氏は、部門もオフィスもチームもない状態からキャリアをスタートさせました。そして今日、彼は日本、そして世界における臨床工学の未来を形作るサポートをしています。
吉岡淳(工学博士)が山形大学医学部附属病院に赴任したとき、そこには受け継ぐべき「臨床工学部門」など存在していませんでした。彼自身がその部門そのものだったのです。同院初の臨床工学技士として採用された彼は、ゼロからプログラムを立ち上げる任務を課され、その取り組みはやがて1,500台以上の医療機器を中央管理するまでに成長しました。
現在、吉岡氏は仙台赤十字病院で15人の臨床工学技士チームを率いる傍ら、ミャンマーでの臨床工学ディプロマ(学位)プログラムの設立を支援してきました。また、複数の特許を保有し、さまざまな医療機器のイノベーションも開発しています。そして先月、AAMI(医療機器進歩協会)は彼を **2026 BMET of the Year** に選出しました。
> 「AAMIの『BMET of the Year』を受賞できたことは、私のキャリアの中で最も大きな栄誉の一つです」と吉岡氏は語ります。
> 「臨床工学の分野で25年以上を過ごしてきた者として、世界中で私たちの専門性の発展に多大な貢献をしてきた組織からこのような評価をいただけることは、身の引き締まる思いであり、深く意味のあることです」
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「信頼」の上に部門を築く
吉岡氏が最初の臨床工学技士として山形大学医学部附属病院に赴任した当時、スタッフの多くはその職種と一緒に働いた経験がありませんでした。病院内には臨床工学のための部門も、オフィスも、机も、確立された居場所すらありませんでした。
ICU(集中治療室)でのある初期の経験が、その課題の大きさを浮き彫りにしました。人工呼吸器のアラームが鳴り、吉岡氏がサポートしようと機器に近づいたとき、医師に制止されたのです。
「振り返ってみれば、その反応をされた方を責めるつもりは全くありません」と吉岡氏は言います。
「当時はまだ、病院内で臨床工学技士の存在が確立されておらず、私たちの役割が十分に理解されていませんでした。部門を築く前に、まずは **『信頼』を築かなければならない** と痛感したのです」
大きな取り組みを打ち出すのではなく、吉岡氏は基本に集中しました。機器を清掃・整理し、要請には迅速に対応し、医師や看護師の具体的な困りごとを解決するために動いたのです。スタッフがその役割に慣れ親しむにつれ、医療の安全や医療機器の安全性において、臨床工学技士がもたらす価値が理解され始めました。
最初の大きな転機は、少数のシリンジポンプの中央管理を任されたことでした。そこでの成功が、患者モニター、除細動器、人工呼吸器、ECMO(体外式膜型人工肺)、透析装置など、さらなる機器の管理責任へとつながっていきました。時間をかけて、この「1人だけの体制」は、専用の臨床工学部門へと成長していったのです。
> 「私が学んだ最も重要な教訓は、臨床工学のプログラムは技術的な専門知識だけで築くことはできない、ということです。**信頼が第一です。** 医療従事者が、あなたが安全性、信頼性、そして患者ケアを継続的に向上させている姿を目にすれば、支持は自然とついてきます」
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「傾聴」に根ざしたイノベーションの哲学
山形大学医学部附属病院は大学病院(教育研究機関)であったため、吉岡氏は臨床現場と研究・教育を融合させることができました。「優れた臨床工学部門は、機器をメンテナンスするだけでなく、知識を発展させるべきだと信じていました」と彼は語ります。
その哲学が、吉岡氏のイノベーションへのアプローチを形作りました。彼のプロジェクトの多くは、**「患者や医療従事者が直面している、まだ誰も解決していない問題は何か?」** という問いから始まります。
「解決する価値のある問題の多くは、技術マニュアルや研究論文の中には見つかりません。それは、現場の人と人との直接的な関わりの中から発見されるのです」
その一例が、NEC(日本電気)や地元の企業パートナーと共同開発した「酸素ボンベ残量アラーム」です。この装置は、医療従事者が酸素ボンベの圧力計を目視確認に頼ることで、空に近いボンベを見落としてしまうという、現場でよくある安全上の課題を解決するために設計されました。
開発されたアラームシステムは、ボンベの圧力を常時監視し、酸素が枯渇する前に視覚と聴覚で警告を発します。吉岡氏によると、臨床評価では、手動監視の負担を軽減しつつ、ボンベが空になる事例を減少させることが実証されました。
「このイノベーションが私にとって特に意味深いのは、**現場の医療ニーズから直接生まれたから** です。見過ごされがちだった日常の安全への懸念を、毎日患者を守るための実用的なソリューションへと変えることができました」
このプロジェクトは、吉岡氏が掲げる **「4つのS(Simple、Safety、Smart、Support)」** という開発哲学を反映しています。機器は直感的に使え(Simple)、患者の安全を最優先し(Safety)、実用的な問題を解決し(Smart)、長期的な信頼できるサポート(Support)に裏打ちされているべきだという考え方です。
吉岡氏はキャリアを通じて、この哲学をさまざまなテクノロジーに応用してきました。その中には、過充電による劣化を防ぎ、病院内の充電インフラを標準化するために設計されたバッテリー管理システム「VOLT BANK」があります。また、彼が「世界初」と表現する水不要の輸液ポンプチェッカー、深部静脈血栓症予防装置用のポンプチェッカー、Wi-Fi機能を搭載した輸液ポンプなども開発しています。
「私のゴールは、常に開発者と臨床現場の医師・看護師の間の架け橋になることです」
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次世代への投資
数々のイノベーションや業界での受賞歴があるにもかかわらず、吉岡氏が最も誇りに思っている業績は「教育」です。
彼は以前、群馬パース大学で教鞭を執り、学生たちが国家資格を持つ臨床工学技士としてのキャリアを歩むための育成に携わっていました。教育において最もやりがいに感じたのは、学生たちが学びを深め、国家試験に合格し、患者の命を支える現場へと旅立っていく姿を見届けることだったと言います。
教育への情熱は日本国内にとどまりません。一般社団法人 臨床工学国際推進推進財団(Clinical Engineering Global Promotion Foundation)での活動を通じて、吉岡氏はミャンマーにおける臨床工学ディプロマプログラムの設立を支援し、現在も国際的な人材育成イニシアチブをサポートし続けています。
> 「医療機器だけでは医療の成果を向上させることはできません」と吉岡氏は指摘します。
> 「持続可能な医療の向上は、テクノロジーを供給することだけでなく、**『人』を育てること** にかかっているのです」
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進化する専門職
日本における臨床工学技士の役割は、諸外国のそれとは大きく異なります。日本の臨床工学技士は国家資格を持つ医療従事者であり、患者と直接関わり、人工透析、人工呼吸器、ECMO、人工心肺などの生命維持管理装置を直接操作します。
吉岡氏がこの分野に入った25年以上前と比べ、職種を取り巻く環境は大きく変化したと言います。
「私のキャリアが始まった当初、この専門職は主に『医療機器の操作』と『安全な管理』という2つの核心的な責任の上に成り立っていました。しかし今日、それらの責任は **『機器操作』『機器管理』『医療従事者への教育』『テクノロジーのイノベーションと開発』という4つの柱** へと拡大しています」
近年の臨床工学技士法の改正により、この専門職の業務範囲はさらに広がり、従来は医師が行っていた特定の処置を、確立されたプロトコルと指導監督のもとで実施できるようになりました。その結果、心臓カテーテル治療、集中治療、内視鏡手術のサポートなど、より高度な臨床活動への参画が進んでいる、と彼は説明します。
こうした制度的な違いはあるものの、吉岡氏は世界中の臨床工学技士が共通のミッションを分かち合っていると考えています。
「最大の共通点は、世界中の臨床工学技士が **『テクノロジーを通じて患者の安全を向上させる』** という、全く同じ究極のゴールを共有していることです」
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進化の次のフェーズ
吉岡氏は、臨床工学の次のフェーズは「医療のデジタルトランスフォーメーション(DX)」によって推進されると考えています。AI(人工知能)、医療用ロボット、コネクテッドデバイス、デジタルヘルスプラットフォームがケアの現場に統合されるにつれ、臨床工学技士には従来の機器管理を超えた専門知識が求められるようになります。
「未来の臨床工学技士には、医療機器だけでなく、ソフトウェア、データ管理、サイバーセキュリティ、相互運用性、そしてデジタルヘルスインフラに関するコンピテンシー(能力)が必要とされるでしょう」
また、遠隔モニタリング技術やコネクテッドデバイスが病院の壁を越えて普及するにつれ、臨床工学技士が地域医療や在宅ケアにおいてより大きな役割を果たすようになると予想しています。同時に、体外循環、透析、不整脈デバイス管理、集中治療、災害医療といった分野でのさらなる専門特化の機会も増えていくと見ています。
> 「最終的に、臨床工学技士の将来の役割は、機械を管理することだけで定義されるのではありません。**人と、テクノロジーと、そしてますます自律化していくシステムとの間の『関係性』を管理すること** によって定義されることになるでしょう」



