第33回日本臨床工学技士会 パネルディスカッション開催報告

パネルディスカッション21
Protect Our Future 「安心・安全・未来は自分達で守る!」

 

羽原 詠治1) 濱口真和2)

中国労災病院1)

熊本赤十字病院 臨床工学部2)

 

  1. はじめに

2024年度に、医師の働き方改革の施行に伴い、タスクシフト・シェアにおける告示研修が開始されコア期間である2027年までには多くの臨床工学技士(CE)が、受講出来ると推測される。多くの場面でCEが必要とされている中、身の安全も第一に考えなければ業務拡大された内容に従事することは難しい。今回は、安心して拡大された業務を行え、未来に繋げられるような内容を踏まえてご講演及びディスカッションを行なった。セッションの内容をわかりやすくグラフィックレコードとして、記録を残した。

  1. 発表概要

タスクシフト・シェア、昨今の委員会活動について

佐々木 新 先生 岡山済生会総合病院

タスクシフト・シェア・委員会の現状について発表いただいた。タスクシフト・シェアについては、信用と信頼の積み重ね、医師とのコミュニケーションや業務を行うCE間での情報共有も必須項目であること。人材活性化委員会の活動については、6つの事業を展開している。

 

賠償責任保険制度・賠償責任保険の補償額UPについて

青木 郁香先生 (公社)日本臨床工学技士会 専務理事

昨年、新たに追加された賠償責任保険について、講演をいただいた。技士会に入会されている会員数の9割が加入し、他の職能団体と比較して当会の加入率は高いとの調査であった。新たな賠償責任保険の補償額UP行われた。賠償責任保険が死亡等のシビアな事例に使用されている実例はないが、業務中の怪我に対しても対象となることをお話しいただいた。学会等の業務・養成校での教育・機器操作デモなどでも補償がなされる。

 

退会者抑制と女性技士の集いについて

千葉 美樹 先生 公益財団法人仙台市医療センター 仙台オープン病院

退会者抑制に関する活動については、所属県での活動について講演された。所属県での魅力を常に発信し、情報弱者を作らないことを大前提として活動を行なわれている。CEの女性の割合も少ない中、女性に特化した形で北海道・東北ブロックでの集いも開催されている。

 

CEの志望者拡大は、すべてのCE一人一人にかかっている~志望者拡大の展望~

百瀬 達也 先生 社会医療法人財団慈泉会相澤病院

私たちの職種を後世に継承することも大事な使命である。現在は、養成校でのオープンキャンパスやリーフレット、各施設で行われる職業体験会での広報となっている。今後は、日臨工・各都道府県・養成校の三位一体とした広報活動を行い、対象を中高生から中高生の保護者に重きを置くことも武器になるのではないかと思われる。

 

ディスカッション

会場からの質問:

医師不足が解消されて充足した場合について、どのように立ち向かうのか。」

佐々木委員:医師の労働負担軽減以外にも、高度化する医療機器の操作をすることで、CEの知識を活かすことで重要性を高めることがある。

青木専務理事:人工心肺や人工透析分野においては、CEが特化している分野であるため、必要不可欠な存在となっている。

「非会員を取り巻く現状について、どのように対応が必要であるか。」

石塚常任理事:施設での代表者への理解が大前提であり、各都道府県技士会からの協力が必要になってくる。

大山委員長:委員会では、ポスターでの配布及びHPでの周知を行っている。

青木専務理事:日臨工での対応として、CEが所属している施設・所属していない施設へも周知を行っている。他団体からのアプローチを行うことも検討中。

「女性活躍及びセミナーなどの開催が多数あり、理事の負担についてはどのように対応されているのか。」

千葉事務局長:コロナ禍での新たなやり方を考案することが大変であるが、理事として立候補しているという点が最重要であり、会員満足度をUpすることが、技士会の発展につながるという思いを持つことが大事であると述べられた。

百瀬委員:認知度向上活動については技士会として養成校と連携を行い、イベントの共催を行うことで、それぞれの負担軽減が出来るのではないかと思われる。

木村常任理事:ポスター等による告示研修の広報に加えて、告示研修を受講されずに新業務を行なった場合は法律違反になり告発を受けるリスクが生じる、という点も重点を置き伝えていきたいと述べられた。

 

総括と展望

私たちCEを取り巻く環境が変化している世の中であり、学生時代からのつながりや各都道府県技士会から非会員に向けた広報についても、今後加速しなければならないと思われる。新業務を行うCEへの賠償責任保険については、保険料の減額がなされたが、昨今の医療訴訟に対応できる形での補償額は増加している。女性活躍に関してCEの職種は男性が多い職業でもあるが、女性が就業することも少なくない現状でもある。ワークライフバランスといった点において、今までと変わらない活動を続けていくこと、新たに女性限定の集いが各地で開催されることで、同じ境遇におかれているCE同士での話も聞くことも共通意識という点において有意義である。技士会としても働きやすい環境を整えることへの働きかけも重要なテーマであり、離職抑制の1つの材料となれれば良い。

約4万人のCEが免許を取得し、医療機関や企業・起業と新たな働き方もあり、CEの職種幅が広くなってきている。今後の未来を想像し、日臨工を含めた全国都道府県技士会・教育施設協議会と共に考え、一体となって取り組んでいく必要がある。現状に満足することなく、10年後の未来を想像しながら、世論に合わせた形でのCEの発信ということを考えていかなければならないと思われる。

今回のセッションにおいては、4つのテーマについて講演及びディスカッションを行なってきた。全てのテーマを1つの言葉で表現することは難しいが、大会テーマでもある「Peace For Innovation 〜peace:無事 安心への新たな展望」を実現するためには、告示研修で十分な知識を身に付け、賠償責任保険の補償額UPも充実していることから、攻めた医療を提供出来るということを表に出し、この職種の魅力を常に発信し続け、多くの方にCEの仲間へ加わっていただけるよう、活動を行なっていく必要があると思われる。他職種からも認められるようには、信用と信頼の積み重ねが大事であり、CE一人一人が患者さんの治療補助を全うし、結果を残していくことが今後のCEの未来像を大きいものに出来ると感じたセッションであった。