渡邉 研人

 

2021年4月の終わり、ある学会のWebセッションでご一緒した日本臨床工学技士会 国際交流委員会の米国駐在員である 長澤 智一 氏 より、唐突に「今のプレゼンで紹介していたシステムをAAMIで発表してみない?」とお声がけいただいた。英語が堪能なわけでもないし、もちろん国際学会なんて未経験であったため躊躇していたところ、「Webでプレゼンするだけだから」と後押しがあり、自分自身の中でも、いつかは国際学会で発表したいという気持ちもあったので参加することを決意した。

準備期間

6月の学会と聞いていたので、1ヶ月以上あると悠長に構えていたところ、急遽事前収録を行うとのことになった。事前収録までの2週間で、プレゼンの方向性からPowerPoint資料作成、英語発表原稿まで作成しなければならず、間に合うか不安であったが、長澤氏と優秀な息子さんのフォローのおかげで、発表原稿の修正も含めた資料作成を事前に終えることができた。米国のClinical Engineerは臨床業務を行わないとのことなので、日本特有と思われる技士制度に触れつつ、医療機器のマネジメントをしながら臨床業務をこなし、自作システムを開発する技士の1例という内容で発表することにした。

事前収録

事前収録日は進行役の米国人による容赦ない英語説明から始まり、ほぼ聞き取れず混乱しながらのPowerPoint操作を強いられたが、ここでも長澤氏の助けでなんとか向こうの指示通りプレゼンを遂行できた。座長を務められた仙台赤十字病院の吉岡淳氏、日本側の登壇者としてご一緒した滋慶医療科学大学の島崎拓則氏には、この時に初めてご挨拶させていただいた。米国人の登壇者の方は突然の事前収録には対応できないとのことで欠席されたため、米国の学会なのに、座長および登壇者が全て日本人という面白いシチュエーションでの事前収録であった。

学会当日

6月7日、いよいよ学会が始まり、質疑応答の日を迎えた。現地時間7日16時、日本時間8日5時に日米のセッション登壇者がWeb上で一堂に会した。参加予定者が188人の大人気セッションだったようで、学会プラットフォーム上では事前質問も来ていた。事前収録動画を流したあとに、Webプラットフォーム上で口頭およびチャットでの質疑応答が始まったが、ここで通訳として参加していた長澤氏の息子さんのマイクトラブルが発生。なんとか復旧し、質疑応答が軌道に乗ってきた矢先に、今度は定刻でWebセッションが自動で落ちて終了してしまうというアクシデントに見舞われた。次のセッションの予定があるので、再開はせずにチャットで簡単な挨拶を交わして無事に?セッションは終了となった。強制終了というなんとも言えない状況で私の国際学会初参加は終わりを迎えたわけだが、これらトラブルも今後に活かせる良い経験として前向きに捉えている。

口頭やチャットでの質問内容は、セキュリティの担保は?、開発したソリューションを医療機器として扱うのか?、日本のClinical Engineerは医療機器の操作をするのか?、開発したソリューションのプラットフォームは何か?といった内容であった。

個人的に興味深かったのは、米国人のTodd Cooper氏の発表だった。Cooper氏はIoMT(Internet of Medical Things)化する医療機器には情報の相互運用性が必要だとし、DICOMやHL7を例に挙げ、規定に則った情報の院内での扱いはClinical EngineerがInitiativeをとるべきと主張しており、ちょうどHL7 FHIRの参考書で学んでいる私にとってホットトピックスであった。Cooper氏の主張はまさにその通りであり、今後インターネット化する医療機器に対して、どのようにして情報を統合させていくかが医療機器のマネジメントの質を左右すると思っている。自分の考えと米国人の考えの方向性が一致していたことを知れたのは、今回の学会参加で1番の収穫であった。

最後に

初めての国際学会での発表。しかもオンライン開催。急遽登壇が決まったので、ドタバタな1ヶ月を過ごしたが、長澤氏のサポートのおかげもあって一応プレゼンの体裁は保てていたと思う。今回はWeb参加であったため、関係者の方々にしっかりとしたご挨拶ができなかったことが心残りであるが、コロナが落ち着き、世界が日常を取り戻した際には、長澤氏のサポートの元(重要)、現地での参加にチャレンジしたい。その際には、今回のお礼も含めて、皆さまにご挨拶したいと思っている。

追伸

長澤さん、そして息子さん、発表原稿の添削からリアルタイムでの通訳まで手厚いサポートありがとうございました。

いつの日か実際にお会いできる日を楽しみにしています。