プロジェクトの概要

公益社団法人日本臨床工学技士会(JACE)が国際協力機構(JICA)の事業としてミャンマー国メディカルエンジニア育成プロジェクトを2019年6月に受託しました。臨床工学国際推進財団は本プロジェクト推進の支援と日本事務局業務を担当しております。

  1. 近状報告

待望の第1期生が1年制のME育成コースに入学しました。18人の学生たちのうち半数は主に工学系大学を卒業、その後Engineerとして働いていた人材、残り半数は放射線技士など医療系のバックグラウンドを持つ人材です。入学式にはミャンマー政府大臣他多数が出席し盛大に行われました。ミャンマー国政府が“ミャンマー保健構想2030”を目標にした、中・長期的な医療の質のボトムアップ政策で、医療機器の保守管理および運用を行うMEの人材育成を求めていた背景があり、JICAの委託を受け、開始後2年間の調査・準備を経て実現したのがこのプロジェクトです。

 

2.コースの概要と授業の状況

“おはようございます”日本語の挨拶で朝一の授業が始まります。授業は基本的に9時〜17時でチャイムは鳴らず、講師の裁量で適宜休憩をはさみながら進められます。第1期生は、約半年間の講義の後、学内実習と病院実習を経て2019年4月に全員が無事卒業しました。半年の講義期間は基礎科目をヤンゴン医療技術大学(UMT-Y)が担当し、それ以外の医工学及び臨床工学系の専門科目についてはJACEが派遣した講師が担当しました。ミャンマーと日本の教育システムの違いや言葉の問題などにより、学生の理解が追いつかず苦労した点も多々ありましたが、帰国した日本人講師からは学生の学ぶ意欲と向上心の高さ、勤勉さが話題となりました。今後PJの続報で担当講師の声をお届けしたいと思います。

学内実習は、日本人派遣講師と現地の医療機器企業が担当しました。日本人講師は呼吸器や透析機器の仕組み、トラブルシューティングの実習を行い、現地企業はペースメーカーやAEDなどのその他医療機器の指導を実施しました。病院実習では、各病院1名の日本人講師が付添い、学生は3つのグループに分かれヤンゴン市内3か所の病院をローテーションしました。

Yangon children’s hospitalでの実習風景

【以下病院実習担当の報告書より抜粋】

・故障した吸引器を自分たちで故障個所を発見し、失敗しながらもなんとか自力で修理完了し、スタッフに感謝された事が自信につながると共に、さらに他の機種も修理できるようモチベーションアップになった。

・ICUや手術室にも入り、手洗いやガウンテクニックを習得した。

・患者さんやその家族が見守る環境で機器の不具合が発生した時の対応や医療スタッフへの説明の仕方など実際にやってみることでコミュニケーションの難しさを認識できた。

3.第1期生の卒業と第2期生の入学、将来展望

2019年4月、第1期生が全員修了しました。鮮やかな伝統衣装に身を包み迎えた修了式当日。一年という限られた時間の中で全力を尽くした学生達は輝かしい表情を浮かべていました。修了後は、4つの国立病院に全員が配属され、そのうちの数名は将来の指導者を目指して来年から修士課程を取得するために来日します。

そして、今年6月には第2期生の18名が1年制コースへ入学しました。今後は、1年制ME育成コースを進行しつつ、同学科の教員育成及び2023年12月の4年制コース開設も目指しており、ミャンマー国における臨床工学技士の礎となる人材が羽ばたいていけるようにプロジェクトとしても今後もサポートを進めて参ります。