第27回日本臨床工学会のワークショップ「みんなで知ろうワークライフバランス」と第23回山形県臨床工学会のパネルディスカッション「男女共同参画を考えよう」で、命をテーマにした職場環境の話をさせていただく機会がありましたので、報告します。
ワークライフバランスは仕事と私生活のバランスということでしょうが、我々の職場で切実なのは新たな命、すなわち出産や育児に関する悩みや問題が大きいのではないでしょうか。それは当事者だけでなく、上司や同僚の立場でも直面するでしょう。そこで前述の講演では、ライフを「命」として、私見と私の職場での試みを紹介してきました。
命ですが、人の命を論ずる前に、生物としての命を考えてみました。生命は今から40億年前の原始の地球の海の中で生まれたとされています。その後、巨大隕石の衝突や氷河期や干ばつなど想像を絶する過酷な環境変化に耐え、命のバトンを確実に繋いで一度として子孫を絶やすことのなかった生物のみ、今この地球上に存在しています。植物も昆虫も魚も鳥も哺乳類すなわち私も皆さん自身もです。そして我々は育児によって社会人にまで成長できたのです。
よって、出産や育児は一個人のプライベートの問題ではなく、人類・社会を後世に繋げる大きな意味があるのです。そして、我々医療者はその命を守ることを使命として仕事をしているはずです。
さて、職場は家庭と同じくらい重要です。生き甲斐を得、糧を得、知識や技術・人間関係を広める場であるからです。また臨床工学技士のスキルと信頼関係は、長い年月をかけて築かれてゆきます。だとすれば、技士が出産や育児で職場から離れるのは、職場にとって痛手になるだけでなく、本人にとっても辛いはずです。にもかかわらず、わがままで長期休暇を取るように思われたら、産休・育休を取る方は居たたまれないはずです。一方、当然の権利の行使というスタンスであれば、残されるスタッフは快くは思わず、不平不満につながります。そういった疑心暗鬼が職場にはびこり、働き難い環境に陥ってしまう、あるいは優秀な技士が現場から去ってしまうのは、誰もが避けたいはずです。
管理職の役目は、本人とスタッフに前述したように出産や育児が大きな社会的貢献であると理解させること。そして、本人には権利の主張ではなくスタッフへの感謝を、スタッフには出産と育児という偉業に暖かく協力することを促すことで、職場に前向きな協力関係が生まれるのではないかとお話させていただきました。
講演では壇上から私見を述べさせていただきましたが、実際には難しい課題もあるでしょう。私の職場でも課題はあります。これからも皆さんと一緒に課題を克服してゆきたいと思っております。また、この委員会がその一助になれるよう活動してゆきます。
担当:百瀬