思わぬところで医療機器の出番!?
皆様方は休日にどのような余暇を楽しんでいますか?
最近では登山ブームの影響から、女性登山者を「山ガール」と呼ぶのが流行りました。
日本生産性本部の「レジャー白書2013年」によると、登山の参加人口(年1回以上登山した人)は2012年に860万人で、前年から50万人増えたそうです。
登山人口のうち60歳以上の割合は4割を超し、その年代では10人に1人以上が年1回は山に登った計算となります。ちなみに30~50歳代では、登山する人の割合は男女とも10%に満たないようで、山にも高齢化が進んでいるようです。
さて皆様方は一般社団法人 登山医学会をご存知でしょうか?
1981年に創立された日本を代表する唯一の登山医学に関する専門家の団体です。
第24回北海道臨床工学会の市民公開講座では国際山岳医である大城和恵先生(心臓血管センター大野病院循環器科)の御講演がありました。大城先生は登山家の三浦雄一郎氏や芸人のイモトアヤコさんの登山に同行することでも有名です。
御講演では高所登山において、AEDは使用環境条件0℃以上であるバッテリーを洋服の中に入れ体温で温めながら山頂を目指したとのお話がありました。
一般的な登山でも山荘や山小屋を利用することがあります。それらには宿泊施設としてお風呂の完備されたものから、無人の休憩所・避難所としての役割を持つものと用途は様々です。それらに医療機器(特にAED)が常設されている施設もあります。日本での登山、ハイキング中の突然死の約8割が心臓関係であり、心筋梗塞がそのほとんどのようです。さらにその3分の2は重症の不整脈(心室細動)で死亡しているそうです。※1)
高齢化の進む登山業界において医療機器が必要となる場面も増えてくる可能性があります。山での三大疾患と言われるのは「外傷」「心疾患」「低体温症」です。AEDはもちろんですが、高山病に対しパルスオキシメータを使用することもあり、電気のある山荘のような場所では低体温症に対し温風式加温装置があると安心かもしれませんね。
医療機器の専門家である臨床工学技士の出番が病院以外にもあるような気がしました。
筆者談:(個人的にはもし山岳臨床工学技士ができれば真っ先に手を挙げたいです。)
※1)参考文献:「登山医学入門」増山茂著 山と渓谷社刊
「臨床工学技士」という名称について考えたことはありますか?
医療従事者のみならず名称に「士」や「師」が付く職業は多く存在します。これらの意味にどのような違いがあるかご存知でしょうか?
士:特に学問・道徳を修めた男子。さむらい。武士。
師:学問や芸術を教える人、技術・技芸などを表す語に付けてその道の専門家であることを表す。先生。師匠。
(大辞林より一部抜粋)
昭和62年6月2日に法律第六〇号として臨床工学技士法が公布されました。その際に志高く崇高な意味合いから「士」が使われたと聞いたことがあります。
さて、この「臨床工学技士」の名称については臨床工学技士法第2条第2項で、以下のように定められています。
『この法律で「臨床工学技士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、臨床工学技士の名称を用いて、医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作(生命維持管理装置の先端部の身体への接続又は身体からの除去であって政令で定めるものを含む。以下同じ。)及び保守点検を行うことを業とする者をいう。』
この法律では名称について、他の条項でも多く定められています。その理由は「名称独占」にあるからです。「名称独占」ならびに「業務独占」について示します。
名称独占:一定の有資格者についてのみその資格の名称の使用を認める規制。一般にその資格を有さない者にはその資格の名称又はその資格と紛らわしい名称の使用があわせて規制される。
業務独占:一定の有資格者にのみ一定の業務の実施を独占させる規制。
(補足)保健師助産師看護師法第31条第1項および第32条の規定にかかわらず、診療の補助として行う業務である。
「臨床工学技士」は、その名称を有資格者のみ使用することが許されています#1)。しかし、臨床工学技士法では保健師助産師看護師法のように業務独占に関しては定められていません。
我々が働いている日々の暮らしの中で、その名前について深く考える機会は少ないと思います。しかし、その言葉が持つ意義やその言葉に込められた意味を考えることで初心に還り、志高く業務を遂行する糧となり得るのではないでしょうか。
#1)
(名称の使用制限)
第四十一条 臨床工学技士でない者は、臨床工学技士又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。
みなさんは、いつ「臨床工学技士法」が制定されたかご存知ですか?
臨床工学技士法は1987年5月に制定され、同年の6月2日に臨床工学技士法が公布、翌1988年4月1日に施行されました。
臨床工学技士は「臨床工学技士法」に基づく医学と工学の両面を兼ね備えた国家資格として誕生しました。
1988年5月は第1回臨床工学技士指定講習会が実施され、同年11月に第1回臨床工学技士国家試験が実施されました。
・1987年(昭和62年5月20日):日本臨床工学技士法案 衆議院本会議可決
(昭和62年5月27日):日本臨床工学技士法案 参議院本会議可決
※両議院本会議にて可決され臨床工学技士法成立
(昭和62年6月2日):臨床工学技士法公布
・1988年(昭和63年4月1日):臨床工学技士法施行
・1988年(昭和63年5月) :第1回臨床工学技士指定講習会 各地にて開催
(昭和63年11月6日):第1回臨床工学技士国家試験実施 (受験者数3791名)
臨床工学技士法が公布された昭和62年6月2日から6月2日が「CEの日(臨床工学の日)」となりました。