AARC

AARC Congress 2015に参加して

吉岡 淳

日本臨床工学技士会 国際交流委員会 委員長

相嶋一登

日本臨床工学技士会 国際交流支援部会 部会員

 

 

 米国フロリダ州タンパにて、2015年11月7日より10日までの4日間の日程で開催されたAARC Congress 2015(The 61st International Respiratory Convention & Exhibition, Tampa Bay Convention Center)に参加をする機会を得た。また、海外の医療スタッフとの交流が図れたので報告する。

Ⅰ. AARC Congress 2015への参加

 AARC(American Association for Respiratory Care:米国呼吸療法学会)とは、1955年のシカゴで始まった医療タンクや医療ガスに関するAAIT(American Association for Inhalation Therapy)の学術集会が、60年の歴史を通して呼吸器学の研究と技術進歩へと変化した学会であり、現代では世界における呼吸療法をリードしている。AARC Congress 2015では、300を超える一般演題に、呼吸分野の専門家150人以上からの講演、約250にもなる最新の呼吸療法に関するセッション、セミナーや教育プログラム、大規模な機器展示が行われ、呼吸療法士(Respiratory Therapist: R(Registered)RT, C(Certified)RT)、医師、理学療法士、看護師が参加していた。何と言ってもAARC Congress 2015の最大の魅力は、英文論文でよく拝見する「雲の上の存在」のような著名な先生方の講演を目の前で聴講でき、そして質問をする機会を得られることであって、参加者には夢のような学会であった。

  1. THE OPEN FORUM

 一般演題は「OPEN FORUM」と位置づけされ、「Editors’ Choice」、「Poster Discussion」、「Poster Only」と3つのユニークな形式で学術研究結果が発表されていた。Editors’ Choiceは一般演題の中から優秀11演題(昨年は6演題)が選出され、ポスター展示に加えて、学会3日目に8分のスライドを用いた口演発表(slide presentation)と5分の質疑応答があった。Editors’ Choice を聴講したが、11演題中2演題が大学生のスポーツプレイヤーに焦点が当てられたものだった。中でも、フットボールプレイヤーは閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive Sleep Apnea, OSA)が多く、高い肥満度(Body Mass Index, BMI)と、太い首回りが気道閉塞を誘発してしまう、OSAと循環器疾患は強く結びつくといった大変興味深いものであった。今回はフットボールプレイヤーとOSAの関連性について発表した米国メリーランド州タウソン大学のTamara氏(RT)と日本臨床工学技士会マスコットキャラクターシープリンの力を借りて交流することができ、Editors’ Choiceにつても詳しく話を伺うことができた。彼女の娘が日本語を勉強していることから日本のアニメ、コスプレと話が盛り上がり、今後はメールを通してアメリカでの最新の呼吸療法トピックスを提供して貰えることになった。かくにも、Editors’ Choiceに選ばれるには、高い研究レベルと英語力の両者が必要であることが分かった。余談になるがEditors’ Choice セッションでは彼女からビデオ係を依頼され、約15分間、彼女のiPadを片手にプレゼンテーションを録画していた(haha)。Poster Discussionは薬、人工換気、保守管理、肺疾患、教育、新生児・小児、気道管理、モニタリング・装置、症例発表などの12のセッションに分類され、各2時間のセッションで行われていた。演者はポスター展示を行い、最初の1時間は自身のポスターに立ち寄る参加者に対して自身の研究概説とディスカションを行い、残りの1時間は座長2名の進行のもと、壇上へ上がりスライドを用いずに(no slides)口演発表を行い、会場から質問があった場合に追加説明等を行っていた。Poster Onlyはポスター展示のみを行い、演者は指定日の12:00 pmから1:30 pmの間でポスターの前に立ち、質問と回答を受け付けるものであった。Poster Onlyでも、演者によって発表の工夫がなされ、抄録を配布する者やスピーカーを用いたデモンストレーションを行う者(これは日本人)もいた。

  1. Breakfast及びLunch Symposia Offered by Exhibitors

 学会期間中はコンベンションセンターに隣接されたTampa Marriott Waterside Hotel & Resortにて朝食と昼食が提供された。タンパはこの時期でも日中は30度を超える暑さであったが、日の出は遅く、朝の7時近くでも辺りはまだ暗かった。Breakfast Symposiaは朝の6:00 amから開催されるため真っ暗な中、眠たい眼を擦りながら参加をしたが、会場へ着くとホテルならではの豪華なブッフェが並んでおり食欲から眠気も覚めた。Lunch Symposiaは一転してカジュアルな食べ物であった。ボックスの中には「巨大バーガー」、「サラダ」、「丸ごとのリンゴ」、「クッキー」、「ポテトチップス」がぎゅうぎゅうに押し込まれていた。そして講演中に何のためらいもなく、リンゴをガブリと丸かじりし、最後にポテトチップスをバリバリ食べる参加者を見ると軽いカルチャーショックを受けた。もちろん、ポテトチップスはホテルへ持ち帰った。海外の学会は日本と比べても参加費が異常に高く、最低でも50,000円から高いもので100,000円もある。しかし、頑丈なコングレスバッグや展示会場で配られるグッズ類、これら食事のコストパフォーマンスを考えるとお得なのかもしれない。また、海外の学会は途上国からの参加者へ対する経済支援を重視しており、日本を含む先進国の参加費は彼らの交通費や宿泊費用に当てられる。こうした支援を充実させるためにも先進国からの積極的な参加を促していきたい。

  1. 臨床工学技士の発表

 一般演題では5名の日本人がアクセプト(採択)され、そのうち3名が臨床工学技士であった。臨床工学技士3名中1名はPoster Discussionに採択されており、近い将来、臨床工学技士からEditors’ Choiceが選ばれることが期待された。国際学会で多くの国々から来た研究者が注目する中、英語で発表、質疑応答をしている臨床工学技士たちの姿は凛々しく、輝いていた。

  1. 機器展示

 機器展示は学会会期中の3日間に開催され、最新の人工呼吸器から呼吸管理デバイス、材料が展示されていた。いくつかの展示ブースでは実際に本物のブタ肺が使用され、人工呼吸器で換気がされていた。今回、展示ブースを回りながら感じたことは、ネーザルカニューラや気管挿管チューブといった呼吸管理(Respiratory Management)デバイスの展示が多く見られた。各企業では色々な楽しいイベントが催され、肺のイラストTシャツをプレゼントしたり、挿管タイムチャレンジや息止めショー(Stopped Breathing)が行われてていた。挿管タイムチャレンジは、各国のRTがお互いに挿管タイムを競うもので、自社のNewデバイスを用いることで正しい挿管方法が確認できることをアピールしていた。息止めショーでは、オーストラリアのStig Avall Severinsen氏が1日一回、水の張られた水槽に潜り息止め時間を計っていた。この日は5分10秒、水中に潜っており、その間のサチュレーション、呼吸数、呼気終末炭酸ガス濃度等を自社のデバイスで計測していた。ちなみに彼は、「A four time World Champion freediver」であり、自身の呼吸だけで深く長く潜れる世界記録ホルダーだった。彼の持つ息止めギネス世界記録は22分。また、オーフス大学(デンマーク)の生物学修士と医学博士を取得しており、呼吸の博識と強靭な肺を併せ持つスーパーマンだった。デモンストレーション後は彼に息止めの極意を聞きたく、 “What are you thinking while holding your breath in the water? ” と質問をした。すると、 “I can always be smiley in water.”と答えてくれ、笑顔でいることが長い時間息を止めるのに大切なことが分かった。質問すると彼からお礼にサイン入り本を戴いた。

 

Ⅱ. 海外RTとの国際交流

 AARC Congress 2015では、フロリダ州の米国呼吸療法士協会と台湾の呼吸療法士協会が展示ブースにて紹介及びグッツ販売を行っていた。そこで、当技士会からは「シープリンバッジ」を持参して彼らと交流を図った。夜は各国の呼吸療法士が集まるパーティへ参加をし、親睦を深めることができた。

  1. フロリダ呼吸療法士協会(Florida Society For Respiratory Care, FSRC)

 教育、提唱、職種業務の改善を通して、呼吸療法士に公的な権限を与える団体。AARC Congress 2015では展示会場の入り口、一番目立つ場所にブースを展示していた。ブースでは、FSRCロゴ入りのTシャツ、タオル、バッグ、ピンバッジ、缶バッジ、マウスパッドが販売され、今後のシープリングッツ販売の参考になった。持参したシープリンバッジを渡し、日本における呼吸療法の現状を説明し、日本では臨床工学技士が呼吸療法士と近い業務を行っていることを説明すると、とても驚いているようだった。ブースにいた呼吸療法士の中には、私たちの業務内容(取り扱う医療機器等)を説明したが、栄養士と間違って話を聞いていた者もおり、日本の臨床工学技士の知名度の低さを痛感するとともに、啓蒙活動の大切さを再認識した。最後は名刺交換と、お返しにFSRCのピンバッジを頂き、今後の情報交換等を継続して行いながら両国の交流を深めていきたい。(図7 シープリンを持つフロリダRTたち)

  1. 台湾呼吸療法士協会(Respiratory Therapists Society of the Republic of China, RTSROC)

 台湾にある10地域の呼吸療法協会が統合され、2006年にRTSROCが設立された。会員数は903名で、台湾の10大学から構成されている。台湾のRTは国家資格で、養成校を卒業後、試験に合格する必要があった。日本の臨床工学技士の主業務である人工呼吸器、人工透析装置、人工心肺装置の操作と管理について説明したところ、台湾展示ブースに人工心肺を操作する体外循環士がいた。彼からは体外循環士の現状を聞くことができ、台湾では体外循環士の養成校はなく、病院で勤務している先輩体外循環士の元で働き、知識と技術を取得することで体外循環士になれるとのことだった。また今回はRTSROCの朱理事長と話す機会を得られ、お互いにピンバッジを交換した後、両国の交流を深めることができた。話の中でRTSROCは毎年、日本を訪問していることが分かり、今年は11月に日本福祉教育専門学校、日本呼吸器学会、順天堂医院看護部及び臨床工学室への訪問が予定されていた。最後に、RTSROCには可愛らしい男の子と女の子の2体のゆるキャラがいて、ゆるキャラの着ぐるみも所有していた。

  1. JAPAN NIGTH(International Respiratory Care Party)

 世界中で働いている呼吸療法士を集め、初めて呼吸療法に関する国際会議を企画・発案した福岡県の古賀病院古賀先生が企画するパーティに参加した。現在は、ボイシー州立大学時代のLonny教授(Respiratory Care Department)がこのパーティを継続開催している。参加した呼吸療法士は、アメリカ、メキシコ、韓国、台湾、スペイン、コロンビア、カナダ、そして日本。終盤にはお互いの国がステージに立ちカラオケ(Kyaraoke)大会が始まり、日本は「桃太郎」と「スキヤキ」を披露した。日本人がアメリカで呼吸療法士の資格を取得するには、語学留学は必須であり、指定学校を卒業するまでには約500万円の出費が必要になるとのこと。語学留学には1年からと様々なタイプがあるが、3カ月で朝から晩まで一日中英語を集中して勉強できる“短期型”の語学留学がとても効率的であるとの情報を得られた。現在、語学留学を検討している方は詳しい情報を提供します。

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