海外施設見学

Tampa General Hospital 2016

国際交流委員会 井桁洋貴
 
2016年6月3日〜6日で開催された米国フロリダ州タンパにおいてAAMI(Association for the Advancement of Medical Instrumentation)2016総会が開催され、日本臨床工学技士会国際交流委員として、参加・講演をする機会を得た。また、会期中Tampa General Hospitalを訪問する機会を得たので報告する。

 日本臨床工学技士会と交流のあるTom Judd氏(Kaiser Permanente)のご紹介により(ご同行)、Tampa General Hospitalを訪問・見学する機会を得た。

 
Tampa General Hospitalは、フロリダ州タンパ市中心部にあり、病床数は1,011床、従業員数約6,251名、脳卒中や外傷を得意とするプライベートの非営利病院である。2014年実績では、入院患者数42,129名、手術件数29,450件、救急患者受入数、成人75,373名、小児15,576名、臓器移植338件、とされている。
 
病院訪問にあたっては、Dr. Peter Chang (CMIO)、Ms. Candace Amato (ICU Nurse Manager)、Mr. Erik Edwards (Quality Improvement Analyst)、Mr. Brian Bailey (Operation Analyst) にご案内いただいた。
 
まずは、カンファレンスルームで、病院概要と現在Tampa General Hospitalが導入している電子カルテシステムEpicについての説明を受けた。米国では電子カルテと医療機器のネットワーク管理、セキュリティー管理などもClinical Engineerの重要な業務であり、現在Epicの導入などで、患者データ、生体モニタリングデータの取り込みなどで、CEも多くの労力を使っている背景があり、今回日本のCEの見学ということで、Epic導入についての動きを中心に議論が行われた。
 
Epic導入に当たっては、どのようなものをそれにリンクさせていくか、そのインターフェイスはどのようなデザインにするかなど、非常に労力を要するもので、多くの病院がそのシステム構築に注力している現状がある。Epic導入で医療従事者の入力に対する時間が15%増加したといった報告もあり、経営陣には評判がよいが医療者には負担感があるといった意見以前聞いていたが、Tampa General HospitalではCEを含め、IT部門に約250名の人員を導入し、システム構築を行っているとのことであった。
 
説明の中で、個人的に興味があったのは3点で、一つは医療コスト削減の観点からも予防に注目が集まっているという点、二つ目は、それに伴って様々な生体情報が、例えばウエアラブルといったもので収集されるシステムが構築されつつあるが、それらの情報がそのアプリ提供を行っている会社や通信会社やEpicで集約され、いわゆるビッグデータとしてアウトカムの指標や医療機器市場動向などのデータとして利用されるシステムとなっていること、三つ目に患者満足度を向上させるための取り組み、例えばEpicのインターフェイスのデザインなどで強く意識されている点である。
 
 施設見学は、非常に時間が限られており、細かい質問等もあまりできなかったが、ICU、心臓カテーテル室を中心に見せていただいた。ICUへの異動中、各所にICタグが設置されており、スマホの専用アプリを利用して、目的地を選択、それらのICタグを読み込めば、スマホ上にその場所の写真が瞬時に表示され、道順が写真上に矢印で示されるという道案内システムが導入されていた。
 
新旧の建物が入り組んでおり、迷路のような構造であったが、ITも駆使した工夫がなされていた。その他にも、職種や部門でのユニフォームの色分けなど、患者、訪問者が理解しやすい様々な工夫がなされていた。ICUはすべて個室化されており、やはりアメリカらしくすべての部屋にリフト設備が整えられていた。部屋によっては手術用に簡易無影灯が備えられており、迅速な処置が可能となっていた。夜間の人員体制については明確なお答えをいただけなかったが、遠隔での観察、指示などが可能となる緊急コールの整備も進めている旨お話をいただいた。
 
カテーテル室は、患者導線、職員導線がしっかりと分離されており、職員通路からは操作室、処置室がガラス越しに観察できる構造で、各部屋の進行具合などがわかりやすいと感じた。操作室、処置室共に充分なスペースがとられていた。急なリクエストではあったが、人工血液透析室にも案内いただいた。こちらは内部を見ることはできなかったが、13床の透析室とのことで、病院の規模からするとあまり積極的に透析を行っているという感じではなかった。
 
<追記>
 今回、このような機会をいただいた、日本臨床工学技士会、日本臨床工学技士会国際交流委員会には深謝するところである。また、ツアーの企画、現地での各種手配においては日本臨床工学技士会の井福副会長、同国際交流委員会の吉岡委員長、大正医科器械株式会社の筧敦子海外事業部長にたいへんお世話になった。現地では、在米のUCHealthの長澤智一氏にアテンドいただき、公私にわたりサポートをいただいたほか、現地滞在中、JSMIの先生方、また参加メンバーとの交流においては、サクラ精機㈱、スリーエムジャパン㈱の両社に多大なる援助をいただいたことを報告する。
 
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デンバー小児病院見学2015

国際交流委員会 AAMI担当 井桁洋貴

c12015年6月5日より8日までの3日間の日程で、米国コロラド州デンバーにおいて行われたAAMI(Association for the Advancement of Medical Instrumentation)2015総会が開催され、会期中、デンバー小児病院(Children’s Hospital Colorado)を見学する機会を得たので以下の通り報告する。

 

 

 

 

Children’s Hospital Colorado (Aurora, CO, USA)見学

c2吉岡氏と交流のあるTom Judd氏(Kaiser Permanente)のご紹介により(ご同行)、Children’s Hospital Coloradoを訪問・見学する機会を得て、施設部門のSenior ManagerのJim Feist氏およびScot Garcia氏のお二人に案内をいただいた。

Children’s Hospital Coloradoはデンバー郊外オーロラ市に位置する、コロラド大学メディカルセンターの施設のひとつで、病床数は479床、従業員数5,600名の小児病院である。2013年の入院患者数18,000名、手術件数20,000件、外来患者数524,000名、救急患者受入数93,000名とのことであった。非常に限られた時間ではあったが、ヘリポート、一般外科病棟、NICU、特殊分娩室、ミルクセンター、CCU、血液透析センター、画像診療部を見学させていただいた。

病室は双子など多胎児をのぞき、すべて個室となっており、シャワー設備などを備えた十分な広さのあるものであった。ベッドは成人用と同じ一般的なものも多かったため、転落対策につい質問をしたが、患者の状況にあわせ、ケージ状のサークルベッドの選択を、安全管理者の責任により行っているとのことであった。また米国らしく、多くの部屋で天井にリフトが備えられており、18歳まで対応すること、小児とはいえ150kgを越えるような患児が存在すること、小児期発症疾患を有する患者やいわゆるYASHCN(young adults with special health care needs)の受け入れがあることなどを理由として話されていた。本邦においてもYASHCNの移行、トランジションが議論されることも多く、米国においても同じ問題を抱えていることが垣間見えた。

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また、米国らしいといえば、すべての病室の電話には受話器が2つ備えられてり、英語が母国語でない患者の場合、契約した通訳会社とつなぎ、ひとつの受話器を医療者、もうひとつを患者がもち、通訳を介した3者通話ができる機能を備えていた。一般病床でも、パルスオキシメータなどの最低限のモニタは部屋に配備されているが、NICUやCCUでは、生体モニタがすべての部屋に配備されており、電源などについてもテーブルタップや延長する必要のないよう、広いスペースの確保された頭側に、十分な数の壁コンセントが確保されていた。NICUは48床あり、室内は細かく区切られ、ここでも個室化がなされていた。

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生命維持管理装置などの医療機器についてはストックルームにすぐに使える状態で保管されており、たとえば人工呼吸器であれば、看護師と呼吸療法士(Respiratory Therapist, RT)、ECMOであれば人工心肺技師(Perfusionist)など、看護師とそれぞれの専門家が操作を行うとのことであり、多くの職種が一人の患者に関わっているとのことであった。

興味深い施設として、NICUの一角にミルクセンターと呼ばれる施設があり、母乳の保管や人工乳とのブレンドなどを専門に行うスタッフが配置された部屋が設けられていた。日本でも母乳の管理は労力を要すものであり、専門スタッフを配置することは、大きなNICUをもつ病院ではとても合理的なように思えた。なお、看護師の配置は、一般病棟は4:1、NICUやCCUでは2:1とのことであった。

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分娩室は一見通常の病室と同じような内装であるが、病室もシャワー室も広めの構造になっており、天井には焦点調整のできるライトが備えられ、蘇生機器も備え付けられていた。分娩はほとんどの場合医師が行い、Children’s Hospital Coloradoでは助産師のみでの分娩は行っていないとのことであった。 画像診療部門では4台(3テスラ3台、1.5テスラ1台)のMRIと2台のCTが備え付けられていた。小児病院ということもあり、閉鎖空間でもリラックスできるよう、照明や内装、装置の塗装、音楽、ビデオなど、恐怖心をとりのぞく様々な工夫がなされているのが印象的であった。

今回の見学は、ご対応いただいたのが施設関係の方であったこともあり、具体的な臨床の内容については深く伺えなかった。また、大きな病院にもかかわらず、2時間と時間的に非常に短かったため、駆け足の見学となってしまった。救急の受け入れや、分娩の体制、保険に関することや患者の心理ケアなど、お伺いしたいことも多かったため、次回の施設見学では、見学前後に説明やディスカッションを行う時間を今後は持てるような計画ができればと思った。

謝辞
最後に、今回、このような機会をいただきました、日本臨床工学技士会、日本臨床工学技士会国際交流委員会、井福国際交流委員会委員長に深く感謝をいたします。また、現地のJudd氏とともに、ツアーの企画、手配をいただきました吉岡委員、現地にて様々なサポートをいただきました、大正医科器械株式会社の筧敦子海外事業部長に深謝申し上げます。

施設見学(ウェストチェスターメディカルセンターin New York)

国際交流委員会  吉岡 淳

DSC_0944海外出張というと、主に学会への参加が目的で出かけますが、今回のツアーのように海外の施設見学ができる機会はとても貴重だと思います。

今回はニューヨーク市から40km北にあるウェストチェスターメディカルセンターを訪問しました。 こちらの大学病院にはBiomedical Engineerとして日本人のTsunekage氏が勤務しています。ウェストチェスターメディカルセンターの医療機器を何十年も管理してきたTsunekage氏は、多くの院内スタッフから愛され、尊敬されていることが見学をさせていただきとてもよくわかりました。

最初に臨床工学部門(BIOMEDICAL ENGINEERING SERVICES)を見学しました。いくつかの部屋からなる広いセンターでした。黙々と機器の点検を行っている技士や、手術着をきてORやERを出入りする技士、院内をラウンドして使用済みの機器を回収する技士など日本の臨床工学技士と似ていました。シリンジポンプ、輸液ポンプから空気圧迫装置、重症患者監視モニター、パルスオキシメーター、人工呼吸器、人工透析装置、IABP、PCPS、保育器、電気メス、内視鏡装置など多くの医療機器が部屋毎で管理され、点検後の機器には管理部署名、点検日と次回点検日が記入されたシールが貼られていました。また、医療機器からの警報(アラーム)を監視している部屋がありました。ここでは医療機器はWi-Fi対応機器になっています。アラームが発生した場合は対象の機器から無線でアラーム情報が臨床工学部門で管理しているパソコンに送られてきます。

こちらの臨床工学部門では20名ほどの技士が働いています。しかし雇用形態が日本とは異なり、正職員は5名、その他の15名はメーカーからの派遣社員でした。派遣社員の胸には自分の名前が書かれていない「Visitor」のネームプレートを付け、ポンプ類やモニターといった機種毎のメーカー社員が混在していました。Biomedical Engineerには医療機器のライフサイクル(選定と調達から廃棄まで)を含めた保守管理以上に重要な業務があり、それは院内システムの全電子情報を臨床工学部門で一元化して管理をしていることでした。そのため、臨床工学部門内に院内の大きなサーバーが置かれています。まるでスーパーコンピューターでも置かれているようです。国柄なのか、核や爆弾攻撃を受けた場合の患者データの保全として予備のサーバーをいくつか離れた場所にも保管しているなど、驚く話もありました。

その後は、OR、新生児、小児、大人に分かれたER、ICU、NICU、CCU、カテ室(Biomedical Engineerは放射線治療機器まで保守管理を行っています)、病棟をまわりました。 隣接している小児医療センターも見学しました。多くの寄付金で造られた小児医療センターは、外来入口が水族館です。巨大なサメも飼育できそうな大きな波線状の水槽がいくつもありました。病棟には乗り物型の椅子やテーブルが置かれ、遊園地のアトラクション内にいるかのようです。

廊下の壁には可愛らしい子供や動物の壁画が描かれ、壁一面にマーメイドが描かれた廊下を渡ると海の中を散歩しているようです。小児医療センターの敷地内にはドナルド・マクドナルド・ハウスも設備されていました。ドナルド・マクドナルド・ハウスとは病気の子供とその家族が利用できる滞在施設で、マクドナルドからのDONATION(寄付金)で建てられています。

このように病院全体を見学して部門毎では他職種の方ともお話ができ、実際の仕事現場や業務内容を見ることで彼らのことを少しかもしれませんが知ることができました。

国際交流委員会では積極的な国際学会への参加による先進諸国との交流及び情報の収集、技術協力と臨床工学技士制度の移転協力、青年海外協力隊やボランティアへの参加による開発途上国への臨床工学の普及、国際人の育成と輩出などを行っています。国際交流委員会は世界へ羽ばたく臨床工学技士を応援して、こうした交流を今後とも更に活発にしていきたいと考えます。

“ The International Committee wants to support clinical engineers who want to spread their wings around the world, and is determined to further promote such cooperation. ”

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